鉄骨 鉄筋コンクリート造の寺院建築様式
ここに様式というのは専ら建築の外容から区別している。コンクリート造寺院建築には伝統式・インド式・近代式に大別できるが,それぞれそれなりに繁簡あり、変化もあって造形的に多様化しており、故横山秀哉博士はこれらを比較検討するのに便宜上次のように分類している。
A 伝統式
本割型 簡略型 応用型
B インド式
築地型 西域型
C 近代式
フラット型 ゲーブル型 シエル型 ビル型 アバン
A 伝統式
伝統式木割型
型大正期から昭和初期に始まるコンクリート造寺院は函館東本願寺別院を先例として,おおむね柱・染・壁の構造主体を鉄筋コンクリート造にし,その他斗供・虹梁・木鼻・軒回りから屋根に至るまで,不燃火材で忠実に,これまでの木造建築の木割を踏襲して造り出そうとしているものがある。木割に忠実といっても柱間が広く,柱頭を踪に曲面で絞り,上に斗棋を置くとすれば,有効断面積が縮小して見掛けの柱は太くなりがちであるとか,施工の楽なように線形や絵様などを簡略にして取り扱うなど,おのずから限界はあるが,これらを伝統式木割型と名付ける。たとえコンクリート造に変わっても,このような伝統的な造形構成が宗教界に根強く歓迎されて今日まで残っていることはやむを得ない。東京浅草寺や大阪四天王寺諸堂宇など復古的意義のある建築、横浜鶴見総持寺大祖堂、東京芝増上寺本堂など由緒あるものは風紀上制度の高い木割型によっているし、現在でもなお許されるなら工費と手間と期間をかけても木割型の建設を望む声が各地に聞かれる。北海道札幌中央寺本堂。同旭川大休寺などその例は多い。
伝統式簡略型
鉄骨、コンクリートで伝統式としても造形的に破綻の生じない限り構造施工に無理の少ないような意匠の簡略化が考えられるのは当然です。東京向島の明源寺本堂に軒裏の垂木型の省絡が見られ,芝の俊朝寺本堂の軒では出桁道風に処理している。ともあれコンクリート造としては,大きな屋根の軒の自重を軽減するために軒の出をできるだけ浅くするとか,垂木型を変形あるいは省略,出桁造とかに倣って支持するなどは常套手段となっており,いろいろ工夫されている。柱頭の斗棋は廃止するのが一番簡単であるが,さびしいときには天竺様(大仏様)差肘木を応用した考案は合理的で,木割り型の寺院にもしばしば用いられており,柱頭を時には大斗肘木あるいはこれを崩した特殊線形をもって納める手段もあり軒裏の型垂木や柱頭の斗棋の取扱いが主となるが,釣合上屋根の簡素化,虹梁・木鼻などの線形・絵様などを適切に簡易化することも考えられる。厳密に見れば,木割型の範囲に入れているものでもコンクリート造としては納まり上いくらかの省略簡素化するのはまぬがれない。 軒真の垂木型など一見して省略簡素の判別がはっきりしている
ものを木割型に対して伝統式簡略型と故横山博士は呼んでいる。 簡略法に多少の差はあるが,全体のプロポーションが良好であれば木剖型に比してそれほど見劣りはしない。むしろこの辺が伝統式コンクリート造寺院建築の進むべき遥かと思われるくらいで,事実この分野に属するものが盛んに実施研究されている。
伝統式応用型
伝統様式に愛着を感ずるのは永い伝承と保守的な観念によるものである限り,一応簡略型といっても,なお巨大な屋根,深い軒の出,柱・虹梁・線形・絵様などの概念からは抜けきってはいない。そこで,さらに一歩を進めてコンクリート造として合理的な構造様式で,その主要部分に仏教の伝統造形意匠を象徴的に適宜応用付加することによって,仏教的な表現を試みようとするものがあっても不思議ではない。函館西本願寺別院本堂などがその代表的な着想で,これら一連の様式を伝統式応用型としている。川崎平間寺信徒会館などもこの様式にいれられるが、和洋せ中にも等しい応用型では下手をすると気に竹を接いだ結果となる恐れも多い。応用型で優れた構成を得る事は至難の技であり、なお、コンクリート造として重層建築も容易ではありが、2階建以上となると必然的に応用型となります。
B インド式
インド式築地型
ここに仏教の故地であるインド地方の様式衣装を借りて、コンクリ造にふさわしい寺院建築のいわゆるインド式の着想が生まれる。その大成の一つが東京築地の西本願寺別院が有名です。
インド式西域型
さらにインド。西域あたりの様式のヒントからと思われる異端的な寺院建築物が出現した。築地本願寺系のインド式築地型に対してインド式西域型と呼んで区別した。築地型は東京杉並の築地本願寺和田堀廟所をはじめ練馬みなみ町信行寺。など、地方でも北海道旭川金峯寺。など一連の建築が広く見られるが、大略昭和30年代をピークとして、その後は近代式の流行におされてあまり発展を見ていないのが実情である。また西域型は築地型に比し造形的から見てやや異端性が強かったようです。川崎平間祈願殿がこの種の威容を出現し、築地本願寺本堂と対峙を見せている。
C 近代式
近代式フラット型
フラットルーフの率直簡明な様相で東京本郷に真浄寺本堂が建設され,文字通り近代化に踏み切った。これを近代式フラット型としている。同様式は全国の寺院でも試みられています。
フラットルーフは屋根の軒庇の出と仕上げ方,あるいは向拝の有無,屋上にあげた塔屋・相輪・宝珠の意匠などによりそれぞれ趣は異なっている。軒庇を肘木や持送りで支持させたり,大小二重のフラットルーフで調子を取って屋根をにぎやかにしている例もあります。近代式としてはフラット型が最もひろく行われている。
近代式ゲーブル型とシエル型
屋根を山形にしたフラット型が単純直截であるだけに,何となく物足らなくて、屋り,曲面屋根を試みる場合もあり,これをゲープル型とシェル型の名で故横山博士は区別している。
近代式ゲーブル型
近代式コンクリート構造として勾配屋根は一般に緩勾配とされゲーブル型として東京西浅草善照寺本堂の妻入り,仙台国分寺本堂の平入りなどがあげられます。
近代式シェル型
シエル型は小田原成願寺は典型的なものです。なおグーブル型やシェル型で棟に相輪や宝珠をあげて寺院の象徴としている例はフラット型と同様でしばしばあります。
近代式ビル型
近代化を推し進めて、伝統的な寺院のイメージから離れて専ら機能的経済的に処理すれば仙台東本願寺別院や東京両国回向院本堂などに見られるほとんど一般の営業事務所ビルディングに等しい形態となり,東京浅草三筋町厳念寺のごとく本堂と庫裡の複合用途の建物では一般住宅建築と大差ない姿にまでなっている。
最近のコンクリート造庫裡はほとんど一般住宅と変りのないもので,これらを近代式ビル型としている。寺院の機能を全部収容した高層建築や,近ごろ大寺院で境内に寺務布教活動の場として設けている会館的建築などもやはりビル型が多い。さらに経済上寺院建築の一部にアパートメントハウス的建設をする例もあります。
アバン型
近代化に徹して,模倣,省略,応用から次第に創造へと進み,一部の設計者には,初めから仏教的あるいは宗派的な制約や伝統的な様式などには一切束縛されないことを信条として,前衛芸術と同様に,造形的な合理性と個性実の表現のみを追求するかに見える,まことに近代的ないわゆるアバン・ギャルド前衛的な寺院建築も現れて注目をひいている。
東京新宿原町専念寺本堂のごとく平面計画上に斬新なものもあるが,多くは構造造形的に新機軸をねらったもので,東京新宿喜久井町来迎寺など一連の完全なシェル構造とか,東京浅草永住町妙経寺本堂などの折版屋根,抽象形な名古屋天白町全久寺本堂など新鮮味のある試案が続々実施されている。これらグループの建築に対し,他と比較してまとめてアバン型として区別している。