現在,社会は高度成長をとげ国土の開発はいちじるしく、地価・建築費などは暴騰し,一般木材の使用量の増大から木材の不足、社寺建築に使用できる木材の大断面、大口径の木材の資源から見て良材の入手が困難となり従来最も手軽に入手でき加工しやすく,風土にもっとも適した木造建築はもはや経済的にも問題となる。加えるに大工徒弟制度の崩壊などから伝統的な日本社寺建築技術の低下は社寺建築の施工を困難とし,かつ火災に対する宿命的な欠陥と相まって,あらためて寺院建築の木造に替わるコンクリート造が再認識されてきた。
いまも木造古様式にて再建新築を行っているものも多いが,他面従来の伝統的な外観を重んずるよりは,現代の実用的内容に重点をおく耐震耐火コンクリート造の新しい形態の寺院の要望も強くなってきました。もし設計さえ適切であれば,むしろ鉄骨造、コンクリート造の方がより経済的で防災的にも優れ,階層建築が容易で土地利用率においても有利などの点が挙げられて,鉄骨造、コンクリート造がクローズアップされてくる。
さらに大空間を経済的に作るに当って有利な鉄骨造の建築を利用することが多くなった。仏教界、神道界において鉄骨造、コンクリート造寺院建築に対する違和感も推察できるが,近年,地方の農山村にまで新しい寺造りとして鉄骨造、コンクリート造が普及している。近代社会の反映と寺院経済の理由から,旧来の様式から脱却してコンクリート、鉄骨という材質と構造に矛盾しない近代的宗教建築への発展にあった。
昭和25年6月竣工した東京本郷の真浄寺本堂を藤岡通夫博士がフラットルーフで大胆な設計をするに及んで俄然近代化が活発となる。その後近代的な独創計画が続々と紹介され,特に昭和29年から始まる静岡県富士宮市大石寺の斬新かつ巨大な新建築群の出現などは目をみはるものがあった。近代的単純明快な新しい様式が急速に各地方にまで波及しつつある。
しかしなお根強く伝統造詣へのあこがれが存在していることも事実で、現在コンクリート造寺院を多岐多様化しているゆえんであるといえる。現在それら近代寺院計画の特徴は現在の宗教活動への反省から、一様に従来の勤行法要の道場であった本堂の教化会堂化と、衆僧の僧房であった庫裡の寺族住宅化への傾向が強く、しかも多目的利用が望まれており、建築造形に関する限り、もはや宗教的な色彩はうすくなって超宗派的になった。
現在仏教寺院は全国に5・3ku,1,400人に1個寺の割合に分布しているといわれ,寺院建築の将来は相当数が鉄筋コンクリート、鉄骨造になる可能性をもっている。これまで社寺建築の設計はほとんど特定の堂宮専門家か建築史学者、一部の建築設計者の独壇場であった感もあるが,今では鉄骨、コンクリートという新しい材料を駆使できる新感覚から,一般建築設計者の手になる場合も多くなっている。
私自身も宗教建築には相当な興味を持ち、以前より勉強、研究をしているが、思うに伝統の仕様、工法を学び教団の精神に基きその伝統,教団の歴史、しきたりを尊重しつつ新しい現在にあう建築工法、建築思想で宗教的雰囲気のある新設計をするのであれば、良い空間になるだろう。その宗教的雰囲気に含まれた人間の感情や観念を生かし宗教的な造形様式を実現することは、努力と検討時間を必要とし、日々の寺院建築に対する研究が必要となる。